阿部サダヲは2019年大河ドラマ「いだてん」で演じる田畑政治を紹介します。
いだてんの27話で金栗四三は兄の死とともに競技会を引退し、主人公はオリンピック招致の田畑政治に替わります。
しかしこれから満州事変に始まる十五年の戦争がはじまり、オリンピックを続けながらも動乱に巻き込まれることになる日本オリンピック協会です。
アムステルダムオリンピックにおける日本水泳選手団は大きく検討し、現役選手にもメダリストたちは多く含まれていましたが、
指導者の阿部サダヲが演じる田畑政治はそれだけでは満足せず、監督等指導系統の統一、および日本での水泳選手用に特化したプールの開発を切望し、
その中で1932年のロサンゼルスオリンピックに向けて努力しようとします。一方、38歳になった金栗四三は教師の仕事を続けながら走り続けていたのですが、
熊本の実家の兄である実次から、そろそろ国へ帰らないかという誘いが来ます。迷っている間もなく、実次は病で死去。
父の時と同じく兄の死に目にも会えなかった四三は、悔恨すると同時に父や兄からもらった深い愛情を強くかみしめるのです。
一方、田畑政治はオリンピック選手用のプール『神宮プール』などを開発して着々とロスオリンピックに備えます。
のちに女性水泳選手初の金メダリストとなる前畑秀子と出会い、是非とも女性水泳選手のメダル獲得も目指すようになります。
それを見届けながら、四三は治五郎に頼んで日本体育協会員を辞して熊本に変えることになるのですが、
去り際に田畑政治と出会い、『陸上と水泳はいがみ合っていたが、陸上そしてオリンピック初の出場選手である四三は尊敬すべき存在だ』と
声をかけられ、感謝の思いを込めながらオリンピックの表舞台から去ることになるのです。
1964年東京オリンピック招致の立役者の一人であった田畑政治。
1965年映画の『おれについてこい!』や2009年の経済ドキュメンタリードラマ ルビコンの決断『1964東京五輪を招致せよ 〜祖国復興に賭けた男達〜』、
およびフジテレビ開局55周年記念スペシャルドラマ『東京にオリンピックを呼んだ男』でも政治は出てきていましたが、マイナーな存在であるといえましょう。
まずは成人した田畑政治の強烈なインパクトですね。
東京帝国大学(現東京大学)を卒業しつつも極めてハイテンションで多弁で、面接でも上司に言いたいことをしゃべってしまう田畑政治です。
病気で水泳に参加できなくなっても、水泳への愛情はすさまじく、日本のオリンピック出場も公に広まったためか、
二度あることは三度でパリオリンピックのマラソンで意識を失って失格となった四三や、
金栗四三の最大のバックアップ者だった治五郎といった陸上系の人間に、ものすごい文句たれて水泳選手の頭数を増やそうとするなど、情熱も負けていません。
その一方で、オリンピックのための渡航費用のやりくりは、記者であることを利用して大蔵大臣・高橋是清に直談判してちゃっかりもらってくるという、やることもやる性質です。
『ハイテンションなトラブルメーカーだが、やるときはやる』これが政治の性格といっていいでしょう。
その性格と情熱が、やがて1964年の東京オリンピック招致につながっていくのですが、果たしてどうなるのやら。
さて、政治は意外に長生きしたい派でしたよね。それと同時に、大正天皇の崩御のニュースがラジオから流れてくるのは遊びでしょうか?
そこを妻と相談しつつ、どう乗り越えていくのかがキーとなりましょう。市井の人間の軽快な物語がこのいだてんの魅力でもあるわけで。
もっともこの時代は医学や栄養学が発達していないこともあり、男性の平均寿命は49歳弱、女性も50歳弱でした。
それも半数以上は成人することなく死亡していた時代でした。平均寿命が50歳を超えるのは第二次大戦後にやっとです。
そんな田畑政治を引き立てるのが、桐谷健太演じる河野一郎です。元自民党総裁の河野洋平氏の父で、今の外務大臣河野太郎氏の祖父ですね。
田畑政治に比べて冷静ですが、金栗四三を尊敬する思いは本物です。
お互いにぶつかり合って、四三は事務総長として、一郎は副総理として東京オリンピックを開くことになるのですが、彼らのぶつかり合いも見ものです。
それに比べると、金栗四三はオリンピックで有名になったのに対し、幼馴染の美川秀信は高師を中退して無頼の日々となんとも情けない。
目に見えるライバルが見えにくいというのも前半の不振の一因だったのかもしれません。
もう1人が、政治が東京帝国大学時代に一緒に『大日本水上競技連盟(後の日本水泳連盟)』設立に携わったとされる水泳の監督・松澤一鶴。
演じるのがクドカン脚本の『あまちゃん』で有名になった皆川猿時ですが、これで荒川良々ともにあまちゃんメンバーがそろった感じですかね。
こちらは政治とはライバルというより親友という感じです。
これから1932年のロス、1936年のベルリンオリンピックに向けて、政治とどう向き合い日本水泳を向上させていくのかがキーですね。
とは言え単調で地味な努力の描写だと若い視聴者から総スカンを食らうので、どう面白おかしく描くのもキーでしょうかね。
仮面ライダーでも昭和では花形だった特訓シーンがほとんど見られなくなり、ジャンプ漫画でも修行のエピソードを描くと人気が落ちるそうです。
今の若者たちが長く地味で厳しい修行のストレスに耐えられなくなっていることが一因になっています。
1898年12月1日に政治は、静岡県浜名郡浜松町成子(現・浜松市中区成子町)にて酒屋の家に生まれました。
家は大河ドラマにあったように裕福な名士であったといえます。
旧制静岡縣立浜松中学校(現・静岡県立浜松北高等学校)、第一高等学校(現・東京大学教養学部)を経て、
東京帝国大学を卒業し、1924年に朝日新聞社(東京朝日新聞)に入社します。
『ブン屋に家は貸すな、嫁をやるな』といわれるぐらいの場所で荒々しい人間だったようですが、1949年(昭和24年)に常務に就任します。
1952年のヘルシンキオリンピック、1956年のメルボルンオリンピックと日本選手団の団長を務めた後、
1964年のオリンピックに向けて、かつて同じ新聞記者の同僚であった河野一郎副総理(当時)とともに、
日系アメリカ人の実業家である和田勇(フレッド・イサム・ワダ)を利用して大々的な活動を行います。
1959年に改めて1964年の東京オリンピック開催が決まると、田畑政治は女子バレーボールを公式種目に加えるなどで活躍します。
1964年の東京オリンピックは無事終了。
1973年には青木半治の後を受けて第10代日本オリンピック委員会(JOC)委員長に1977年まで就任し、1984年、85歳で亡くなりました。
田畑政治の嫁は菊枝さんと言います。ドラマでは麻生久美子さんが演じていました。同じ朝日新聞に勤めていて非常にもの静かな女性ですが芯はしっかりしています。
関東大震災からだいぶ復興してきたのを受け、東京市長・永田秀次郎は嘉納治五郎と共に、東京にオリンピックを開くという構想をぶちまけます。
それに心躍らせつつも、政治は1932年ロサンゼルスオリンピックの前哨戦と位置づける日米対抗水上競技大会に参加し、最大のライバルであるアメリカに圧勝します。
しかし軍靴の響きは昭和恐慌の中で少しずつ大きくなり、満州事変が勃発。そのなかで報道の無力さを痛感した河野一郎は、政治家を志すようになります。
一方、時の首相であった犬養毅は満州国の建国に反対。あくまで外国とも武力ではなく話し合いで解決しようとします。
しかし、それによって軍部の不満が高まり、五・一五事件が起きます。犬養はお昼ごろ(史実では午後5時27分)自宅にて軍の青年将校によって暗殺。
(『話せばわかる』と暗殺者の青年将校に語り掛けたところ、『問答無用!』と無数の銃弾を受けたというエピソードは有名ですが、
ここには話し合いがいかに銃弾という力技の前に無力かという象徴な気がします。)
奇しくもその日は、のちに日本女性初の金メダリストとなる前畑秀子を含めた日本水泳部が、式典でロスオリンピックの勝利を祈願して『走れ大地』をうたった日と同じ日でした。
平和の維持が目的であった国際連盟まで脱退した日本に対し、田畑政治は徐々に世相がきな臭くなってきたと警戒しながらも、上司から妻を取らないかといわれ、興味を持ちます。
阿部サダヲはいだてんの脚本・宮藤官九郎の同僚でもあります。
宮藤が脚本を手掛けて大ヒットとなった『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』などの作品に出演しています。
数多くのクドカン脚本に出演している阿部サダヲさんです。
阿部さんは1970年4月23日、千葉県松戸市生まれ。小学校は皆の前で指名されるだけでも泣き出してしまう子供といわれていました。
ですが、中学校、高校と野球を始めるうちに克服し、バンド活動を経験しながら高校を卒業します。
その後職業を転々とした後、友人から『30歳になったらいい役者になれる』という言葉が気になって劇団『大人計画』に入団します。
1992年舞台『冬の皮』でデビューした後、同年には病気で降板した温水洋一の代役として、
入団から半年経たずして『演歌なアイツは夜ごと不条理な夢を見る』でドラマ及びテレビデビューを果たします。
1995年には宮藤官九郎も所属するバンド『グループ魂』を結成し、クドカンとはこれ以降親しくなります。
2000年に彼が手掛けたドラマ『池袋ウエストゲートパーク』に出演した後は常連となり、『舞妓Haaaan!!』で映画デビューもし、日本アカデミー賞助演男優賞を取っています。
2017年映画『彼女がその名を知らない鳥たち』では第60回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞します。
『阿部サダヲ』という芸名は、本名が阿部であることから1931年に起きた珍事件『阿部定事件』(娼婦の阿部定が客の男性と性交渉後その人間を殺害し、その局所を切り取ったという事件です。
渡辺淳一の『失楽園』のモチーフと同時に、いだてんでも描かれるであろう『二・二六事件』『上野動物園クロヒョウ脱走事件』とともに、
1931年の三大事件といわれています)をモデルに『阿部定を』としたあと、『阿部サダヲ』となったといわれています。
その甲高いがよく通る声と、インパクトの強いイメージ故か、いだてん以前にも、1998年の元禄繚乱、2012年の平清盛、2017年のおんな城主直虎と出演した阿部サダヲです。
どの役もどこかユーモラスなイメージが抜け出ないのもまた、阿部サダヲの魅力です。
まだ名前が知れ渡っていないころの役で、旗本寄合(役を持たない旗本)の役としてちょい出演しています。
その一方、いだてんで高橋是清役を演じた荻原健一が、この大河ではマザコン・暴君・犬好きとしての一面が強調されている徳川綱吉役をエキセントリックに演じております。
保元の乱以降、政治のフィクサーとして表舞台に立ち、清盛の出世の立役者となるも、平治の乱で志半ばで倒れることになる信西。
登場当初は貧乏公家の出身らしく(摂政・関白を代々務めることになる藤原北家ではなく南家の出身)、ぼろ服と萎烏帽子でツボを抱えて京の街を歩き回る姿が印象的でした。
かつては藤原北家だけが摂関家として政治を、そして今は天皇一族だけが天下を支配するという、
家柄だけで一生が決まってしまう(もともと儒教は、人間は生まれながらに身分の貴賤があるという考えでしたが)日本に辟易し、宋のような実力で出世できる世の中を志していきます。
主人公平清盛に対しては『国の宝にも災いにもなれる男』、清盛のライバル後白河天皇に対しては『毒の巣』『掌中の珠』と評しつつも、その器を見込んで親しく交流。
清盛と親しくなって、やがて朝廷で出世させるキーパーソンという位置づけだけあって、影のフィクサーと学者肌というともすれば矛盾した性質をよく同居させたものと思います。
やがて出家して信西と名乗り、後白河天皇の乳父(教育係)となったあたりから着物もきれいになり、また坊主頭が非常に阿部サダヲとしては斬新といえましょう。
保元の乱では孫子の教えを政敵・藤原頼長と違って自分の都合のいいように解釈して夜襲を仕掛け、勝利に貢献。
政敵頼長、および清盛の叔父を処刑して反感を買われるも、宋を手本にした理想的改革を行って民衆に慕われていきます。
しかし保守的な公家や、清盛ら平氏(桓武天皇の子孫という事もありましょうが)を重んじ源氏(清和天皇の子孫といわれていますが、
平氏と比べると由緒は正しくなく、しかも義家の子義親は京で反乱を起こしています)をかるんじたことが災いして、
源義朝が起こした平治の乱で、志半ばで倒れることとなりました。これを機に、それまで源氏と融和路線をとってきた清盛は、源氏を亡ぼす決意をします。
政治家的な腹黒さ・老獪さと、学者的な知識を持った信西は、ダーティーな阿部サダヲを見たい方にはうってつけかもしれません。
成人した家康はおろか、竹千代と呼ばれた幼少期でさえも子役ではなく阿部サダヲ自身が演じており、
初登場時は佐野史郎演じる太源雪斎と肩を並べているのを見て、『こんな老けた子供がいるか!』と突っ込みたくなるほどでした。
まあいだてんでも帝国大学を卒業して記者になった時、史実では20代でありながら『とっつあん坊や』と突っ込まれていますが。
(ちなみに、史実で竹千代が元服して松平元信と名乗るのは12歳の時)
近年、『ケチで寡黙な苦労人』『保守主義者』という陰気なイメージ故か、三大天下人のうち一番不人気とされている家康で、
大河ドラマでも凡君として描かれることが多いようですが、阿部サダヲが演じた彼もしかり。
家康の祖父清康のころから岡崎城を拠点に戦国大名となっている徳川家(松平家)でしたが、
家康は『三河のぼんやり者』として、彼の妻(直虎と親しかった)に陰口をたたかれ、またやはりどこか抜けている描写が多く、
また妻に愚痴や不安をしばしばこぼしたりする、直虎の思い人である直親の謀反疑惑が上がった時や、
今川と武田の対立が深まって井伊家取り潰しの危機が高まった時などは見捨てるなどヘタレっぷりも見せて、
三方ヶ原の戦いで武田信玄に敗れた後、城の中で恐怖のあまり失禁どころか脱糞したことまで描かれてしまっています。
(家康はこれを『みそだ』とごまかしたともいわれていますが、この脱糞エピソードはフィクションとされており、
実際家康は城に逃げ帰った後冷静さを取り戻し、三国志の計略として有名な『空城計(くうじょうけい。
わざと城の門を全開させるなどの隙を見せて相手の用心を誘う敗戦時の計略)』を使って信玄の追撃を防いでいます)
気丈で強気な妻の尻に敷かれ気味で、辟易する面も見せる家康ですが、のちに信長に謀反の疑いをかけられ妻が殺されてしまった時は、
(この時に長男も処刑)自暴自棄になって荒れ狂うなど、愛妻家っぷりや人間くささも強調されております。
それでも井伊直政をとりたて、井伊家を『岡崎譜代』として出迎えるあたりは、井伊家を出世させたポジションでも言えましょう。
(よく言えば一度井伊家を取り潰したことへの落とし前をつけた、悪く言えばマッチポンプ)
良くも悪くも気弱で慎重で人間臭い家康、阿部サダヲは映画、TVドラマなど沢山の作品に出演しています。
主人公が金栗四三から田畑政治へと替わりましたが、どうにも振るいませんね。
これから日本が動乱の時代へと突き進む中で、ロサンゼルスオリンピックで成果を残そうと努力していくのでしょうが、
政治面とオリンピック面をどうかかわらせていくかをはっきりさせないとまずいかも。五りんの正体もよくわかりませんね。
狂言回しの美濃部孝蔵(五代目古今亭志ん生)と政治がこれからどうかかわらせるかもはっきりとさせないと益々解りづらくなりますね。
大河ドラマ俱楽部の管理人です。
NHK大河ドラマをこよなく愛し毎週楽しみに視聴しています。
ただ視聴するだけでなく「あらすじと感想」を紹介しています。
でもリアルタイムで見ることができない時は見逃し配信で見たり
時々は歴代の大河も視聴しています。
管理人の大好きな大河ドラマをまとめていますので見逃し配信
と一緒に楽しんで下さい。
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